2012/07/27

三谷版 桜の園

アントン・チェーホフ自身が「喜劇だ」と言っているのに、悲劇と​して演じられてきた「桜の園」を三谷幸喜が「爆笑喜劇にしてみせ​る」と宣言して、演出。

「桜の園」は、杉村春子=文学座公演をビデオで観たのを始め、蜷​川幸雄版、栗山民也版など結構観ているが、喜劇という感じはしな​かった。没落貴族の哀しみって感じ。

今回は、「笑えたけど、三谷さん、ずいぶん原作をいじったな」と​思ったのだが、改めて原作を読み返してみると、驚くほどいじって​いなかった。ということは、やはりチェーホフのテキストは「喜劇​」だったということなのでしょう。
とはいえ、天才三谷幸喜といえども、流石に「爆笑喜劇」にまでは​ならず、なんら手立てを取らず、没落していく貴族階級と、それを​とりまく庶民や使用人の様子をアイロニカルに描いた悲喜劇といっ​た感じ。
没落貴族側には銀幕のスターや新劇の実力者らを配し(浅丘ルリ子​、藤木孝、神野美鈴など)、庶民や使用人たちには小劇場系俳優や​芸人(市川しんぺー、藤井隆、青木さやかなど)を起用して、その​印象からくるギャップも利用するキャスティングは面白かったし、​効果を上げていたと思います。
浅丘さん、藤木さんはとても楽しそうに演じていました。
また、主人公ラフネースカヤの娘で、未来志向のアーニャを演じた​大和田美帆がとても良かったです。
チェーホフ自身はアーニャに対して、「「庶民の暮らしでも大丈夫​」といってるけど、大丈夫かね?」と少し斜に構えた見方をしてい​るような気がしますが、三谷さんは純粋にアーニャを「希望」とし​て演出していたと思います。ある意味、浅い解釈と言えるかもしれ​ませんが、混沌とした今の日本を生きる自分には、その解釈が嬉し​く感じられました。

ところで、とっつきにくいロシア作品に馴染んでもらおうという意​図で、上演前に青木さやかによる前説があったのですが、その中で​青木さんは「歌います!」と以下のようなAKBの代表曲「ヘビー​・ローテーション」の替え歌を歌いました。

♪アントン・チェーホフ
アントン・チェーホフ
I love you.
桜の園~
ガンガン 倒れる桜の木
チェリー・オーチャード~
(ホントはこの先も続くんですが、覚えられなかった)

余りに印象が強くて、観てから数週間経つのに、頭の中に突如とし​て「ガンガン倒れる桜の木、チェリー・オーチャード~」とエンド​レスで聞こえてくるのです。三谷幸喜、恐ろしい子。

2012年6月28日(木) 東京渋谷パルコ劇場にて観賞

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2012/03/11

東京フィルハーモニー交響楽団 サントリー定期(3/9)

昨日(3/9)、サントリーホールで開催された東京フィルハーモ​ニー交響楽団の定期演奏会は音楽的悦びと興奮にあふれた物でした​。15年前に亡くなった黛敏郎さんの「トーンプレロマス55」「​饗宴」「BUGAKU」「涅槃交響曲」を演奏する、黛スペシャル​ともいうべき演奏会。
半年前に、休日オケで「交響詩 立山」「天地創造のテーマ」「日本テレビスポーツ行進曲」と黛さんの曲を演奏していたこともあって、この演奏会は本当に楽しみだった。
「BUGAKU」は20年近く前、GOBオケで故・岩城宏之先生の指導で演奏した曲。演奏を聴きながら、当時のことを色々と思い出した。当時はただただ難しく(特に第一部)、苦労した記憶しかなかったが、今にして思えば、黛敏郎の盟友でもあり、コンテンポラリーミュージックのオーソリティである岩城先生の指揮で、黛作品を演奏できるという得がたい機会(武満徹等もご指導頂いた)をもっと大切にすれば良かった…後の祭りだが。
「涅槃交響曲」はステージ上のフルオケの他に、サントリーのRCブロックに木管楽器にLCブロックに金管楽器を配し、ホールの四方から音が降り注ぐ。東京混声合唱団(の男声パート)お経や声明を唱え、音楽はどんどん盛り上がっていく。
広上淳一さん指揮、東京フィルハーモニー交響楽団の演奏も素晴らしく、本当に楽しい演奏会でした。

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2012/03/01

ライブシネマ「東京事変 Live Tour 2012 Domestique Bon Voyage」

府中のシネコンで東京事変解散ツアーの武道館での最終公演のライブビューイングを見てきました。
このコンサートのチケットはもちろん即ソールドアウト。私も玉砕。
武道館で開催されているコンサートを全国のシネコンで生中継するこのライブビューイング、東京では渋谷、新宿、六本木などでも開催されたのですが、こちらも大変な争奪戦で、私は都心のものは抽選で全てはずれ。辛うじて府中のチケットだけ確保できました(府中は10あるスクリーンのうち3つをこのライブビューイングに割り当てていました)。
雪の影響が心配されましたが、ギリギリ開演前にたどり着きました。

... コンサートは約2時間半。その間、椎名林檎さんをはじめとする東京事変のメンバーはわずかな衣装替えの際以外はほぼ出ずっぱり。曲間のトークもほとんどなく、演奏しまくり歌いまくりです(さだまさしさんとは対照的ですね)。
また斉藤ネコさん指揮のフルオーケストラ(マイミクでもあるプロパーカッション奏者の小竹満理さんもメンバーで参加していました)も加わって、音に厚みと艶を加えていました(個人的にはもう少しミキシングでオケの音を出してほしかったなぁ)。

「生きる」「新しい文明開化」「女の子は誰でも」「群青日和」などなど、演奏だけではなく、振り付けや衣装、映像などの演出も凝っていて時間の経つのを忘れる極上のエンターテイメントでした。

解散コンサートでも変に感傷的になることなく、皆楽しそうに演奏に徹していたのが好感が持てました。

ダブルアンコールの大ラスは「透明人間」。大好きな曲だったので、これで締めてくれて嬉しかったです。

椎名林檎さんというと「歌舞伎町の女王」「ギプス」などのある種とんがった雰囲気の音楽を連想される方が多いと思いますが、東京事変結成の頃から曲調がソフィスティケイトされ、現在に至っていると思います。
(私は昔のはっちゃっけた曲も好きなのですが)

東京事変解散後、椎名林檎の音楽がどう変わっていくのかとても楽しみです。

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2011/12/26

平成中村座・十二月大歌舞伎

本当に久しぶりのブログ更新。

クリスマス三連休の最終日は、平成中村座で。
昼の部を観に出かけた。

演目は「菅原伝授手習鑑」の「車引」「賀の祝」「寺子屋」。平安時代の菅原道真が太宰府に流されたという歴史的事実を題材に、その事件に翻弄される人々、とくに松王丸、梅王丸、櫻丸の三つ子の兄弟を軸に描いた物語。
歌舞伎の数多ある演目の中でも特に有名なものの1つ。

長男松王丸(「車引」では板東弥十郎、「賀の祝」では片岡亀蔵、「寺子屋」では中村勘三郎と交代で演じる趣向が面白い)は道真をモデルにした右大臣・菅丞相(かんしょうじょう)の政敵である左大臣・藤原時平(歌舞伎の中では「ふじわらのしへい」)に仕え、次男梅王丸(中村勘太郎)は菅丞相に、三男桜丸(尾上菊之助)は天皇の弟に仕えている。
ある時、天皇の弟が菅丞相の娘に恋をし、その間を桜丸が取り持つのだが、その事実を知った菅丞相の政敵時平は「菅丞相が自分の娘を天皇家に送り込んで、権力を独占しようとしている」と讒言し、菅丞相はあわれ、太宰府に流されてしまう。
本来は仲の良かった三兄弟だが、菅丞相の家臣梅王丸と時平の家臣松王丸は憎しみ合うこととなる。そして、自分のせいで菅丞相が流罪になったと思い悩む桜丸は死に場所を探す…
「エライ人同士の政争で、周りの人間が翻弄される」という現代にも通じるテーマの作品。
その中の「寺子屋」は、特に人気のある演目である。
(「寺子屋」の前の「賀の祝」で、桜丸は責任を感じて既に自害しており、梅王丸は菅丞相を支えるべく、太宰府に旅立っている)

とある田舎の寺子屋。そこの塾頭、武部源蔵(尾上菊之助)は、かつては菅丞相の弟子だったが、故あって破門となり、今は女房の戸浪(中村七之助)ともに寺子屋を営み、そこに菅丞相の実子・菅秀才を自らの子と偽って匿っている。そこへ時平側の追及が迫り、「命が惜しければ、菅秀才を殺してその首を差し出せ。別の物の首を差し出さぬように、菅丞相とも菅秀才とも顔見知りの松王丸を首実検(斬首した首の身元を確認すること)役に差し向ける」との要求が源蔵に突きつけられる。

源蔵は、「教え子の誰かを殺して、菅秀才の身代わりにするしかない…しかし、みんな田舎者の子供ばかりで、菅秀才には似てもにつかない。どうしたものか」と悩んでいる。とそこに、女房戸浪が気品ある見知らぬ少年を連れているではないか!「この子は誰だ」と戸浪に尋ねると、「小太郎という子で、今日から寺子屋で勉強させたいと母親が連れてきた。母親は用足しをしてくると隣村に行っている」との答え。これはおあつらえ向きである。
源蔵夫妻は、さして躊躇することなく、小太郎を身代わりにすることを決意。丁度、時平方の追っ手が来たので、小太郎を殺してしまう。

時平側には首実検役として、案の定、松王丸がいた。首実検を始める松王丸。源蔵はもし、松王丸が身代わりに気がついたら、松王丸と差し違える覚悟で、松王丸の反応を窺っている。松王丸は、小太郎の首をじっと見つめた後、一呼吸置いて「菅秀才の首に相違ない。源蔵、よくやった」と言う。時平側はその答えに満足して、小太郎の首をもって帰っていく。松王丸も去っていく。

源蔵夫婦は緊張が解けて、腰が抜けたようになりながらも「よかったよかった。松王丸が見間違えたのは天の配剤だ」と喜び合う。と、そこへ小太郎の母・千代が戻ってくる。千代が生きていたら、身代わりが露見しかねない、と彼女を殺そうとする源蔵、しかし千代は必死に抵抗。「小太郎は無事、菅秀才の身代わりとして、役に立ったのか」と問う。驚く源蔵。そこに松王丸が戻ってきて、全てを語る。

「自分は時平に仕えてはいたが、自分を時平に推薦してくれた菅丞相に強い恩義を感じていた。時平の陰謀により、菅丞相が流罪になったときは怒りを覚えたが、時平との主従関係のためどうしようもなかった。今回、源蔵が菅秀才を匿っていることが露見し、自分が首実検役を命じられたとき、源蔵はきっと身代わりを立てるだろうと思った。そこで、自分は千代と相談し、菅秀才と面差しの似ている小太郎を身代わり役として、寺子屋に送り込んだのだ」と。

言葉もない源蔵に松王丸はさらに問う。「小太郎は、貴方に殺されるとき、見苦しく抵抗はしなかったか」と。源蔵は「菅秀才の身を守るため、身代わりに死んでくれと言うと、抵抗もせず、微笑んで自分に討たれた」と答える。松王丸は「そうか。笑ったか。でかした。でかした。小太郎は菅秀才様のお役に立てて死ねて本望だろう。それに引き替え、菅丞相様にご迷惑をかけて、それを晴らすこともなく自害した桜丸が不憫でならぬ」と涙ながらに語る。

松王丸夫婦、源蔵夫婦、匿われていた菅秀才、そして秀才の母御園の前が小太郎の骸に手を合わせて、「寺子屋」幕。

「寺子屋」は「菅原伝授手習鑑」の中でも、特に人気のある演目である。忠義のために、自らの子を犠牲にする松王丸の姿が日本人の琴線に触れるのだと思う。会場でも泣いている人が少なからずいた。
私もこの演目を観るたび、日本人のDNAが呼び覚まされてグッときてしまう。今回もちょっと泣きそうだった。しかし、冷静に考えると忠義のためとはいえ(自分自身が死ぬならいざ知らず)自分の子を死なせる松王丸には「そこまでやらなくてはいけないのか…」と思う部分もあるし、また菅秀才を守るためとはいえ、縁もゆかりもない他人の子を殺し、さらには母親まで口封じに殺そうとする源蔵の所行(しかも、源蔵夫妻は身代わりを殺したこと自体は「可哀想だが、仕方がない」と思っている)は肯定されて良いのだろうかと思う、現代人の自分がいる。

忠義者だが、直情径行型の梅王丸を中村勘太郎が生き生きと演じていた。来年、中村勘九郎を襲名するので、やる気がみなぎっている感じ。菊之助は桜丸と源蔵の二役、桜丸のような優しい男はいかにもピッタリだが、源蔵のような役はどうかと思ったが、忠義に悩む若侍を好演。勘三郎の松王丸は流石の貫禄、病気は大分回復したものの、まだ本調子ではないのか、声に力がないのは気になったが、泣き笑いしながらわが子を褒める演技はやはり圧巻だった。

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2010/05/04

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2010に行ってきた

毎年ゴールデンウィークに、東京国際フォーラムとその周辺で開催される音楽祭、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2010に行ってきました(5/2)。
「誰でもクラシック音楽に親しめる音楽祭」をテーマに、チケット代を抑えた(MAX3,000円)コンサートを期間中(5/2~5/4)に毎日何十と開催し、無料のコンサートやイベント(アマチュアの演奏も多数あり)も行われるこの音楽祭。
毎回テーマが決まっていて今年は「ショパン(と同時代の作曲家)」。

今まで、仕事がらみや他の予定で行けたことがなかったのですが、今回初めて行くことができました。

会場は、食べ物の屋台がたくさん出ていて、音楽祭というより、大きなバザー、フリマといった感じ。

安い値段ということもあって、有名アーティストの公演は販売と同時にソールドアウト。
なんとか、2つだけ有料公演の切符を買えました。
ほとんどのチケットが売り切れで、アーティストや演目でなく、空いているコンサートという感じでゲット。
2つと言っても、1つのコンサートが45分と決まっているので、多くの人が「はしご」をするのです。

私が聴いたのは、アブデル・ラーマン・エル=パシャというレバノンのピアニストがソリストを務めるのショパンのオケとピアノのための音楽のコンサートと、ルイス・フェルナンド・ペレスというスペインのピアニストがソリスト務めるメンデルスゾーンのピアノコンチェルト2番のコンサート。
あと、アマオケの丸の内交響楽団の無料演奏を聴いてきました。

エル=パシャの演奏は良くも悪くも教科書通りのショパンでしたが、フェルナンド・ペレスのメンデルスゾーンは、かなりのテクニックに感心させられっぱなしでした。全く期待していなかったのですが、うれしい誤算(帰宅後ネットで調べたら、このペレスさん、日本ではまだ無名だが、とても期待されている俊英らしい。棚ぼたでした)。

丸の内交響楽団の演奏も、珍しいオケ版の軍隊ポロネーズや、有名だけどあまり生で聴かないリストのハンガリー狂詩曲など、親しみやすく、しかも新鮮な演目でした。フリースペースでの演奏でやりにくかった(みんなアイスクリームを食べたり、コーヒーを飲みながら見てる)でしょうが、頑張っていました。お疲れ様です。

それにしても、凄い人。くたびれました。
年を取ってきたのか、毎年人混みがどんどん苦手になってきてる。

そうそう、同じ東京国際フォーラムで開催していた「アガサ・クリスティ展」が凄く面白かったです(コンサートとコンサートの間に入場)。
珍しい彼女の原稿や、彼女自身が愛用したタイプライターが展示され、彼女の肉声や映像も公開されていました。
ミステリー好きには必見です。

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