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2008年11月

2008/11/07

「私生活」と「バッタモン」

少したってしまったが、印象的なお芝居を二つ見た。
1つは日比谷のシアター・クリエ(旧芸術座)で上演されていた「私生活」。
もう1つは下北沢のザ・スズナリで上演されていた「バッタモン」。

「私生活」はイギリスの劇作家ノエル・カワードが1930年代に書いたコメディ。
内野聖陽、寺島しのぶ、中島朋子、橋本じゅん(時代劇俳優じゃなくて、劇団☆新感線の方ね)が出演。内野さん、寺島さんの芝居がじっくり観たくて出かけた。
互いに奔放な恋愛観を持つが故に別れてしまった元夫婦(内野、寺島)が、それぞれ新たな伴侶(中島、橋本)を得て訪れた新婚旅行先のホテルでばったり再会。どちらも新しい伴侶の凡庸さに辟易としていた二人は焼けぼっくいに火がついて、たちまち駆け落ち。
しかし奔放な恋愛観ゆえ、またまたぶつかり合い。
そこへ逃げられた二人が追いかけてきて・・・。というストーリー。
コメディと言っても、登場人物同士、互いのエゴとエゴ、本音と本音がぶつかり合うかなりお腹にくるストーリー。2時間半近い芝居の半分以上が、登場人物同士の罵り合い、時には取っ組み合いのケンカという「和を以て尊しとなす」の日本人には、登場人物たちの自我エネルギーに感心するやら呆れるやら。
恋愛にかなりだらしなく自分の欲望に忠実だけど、心の奥底には空虚さを抱えている男女を内野さん、寺島さんは実に楽しげに演じている。イチャイチャするシーンは「本当に愛し合っているんじゃないか」と思うくらいラブラブに、取っ組み合いでは怪我しないのかと思うくらい、力一杯。
内野さん、寺島さんは本当にエロくて(最高の褒め言葉のつもり)素敵だった。
内野さんは、山本勘助ではなくミナミハラ教授の路線。主役でありながら、物語を引っかき回す狂言回しでもあるという主人公を「こんな奴いねぇだろ」と思わせながらも、「でもこういう生き方もありかも」と思わせるのは流石。ちょっと声の調子が悪かったのが残念だった。寺島さんは、「こんな女性と付き合ったら身も心も持たないわ」と思わせるような身勝手で奔放な女性を、しかしとっても魅力的に演じていた。自他共に認めるドMの私はイチコロでございました。
前半は二人に食われ気味だった中島さん、橋本さんも、駆け落ち先に乗り込んできた辺りから絶好調。大いに笑わせてくれた。橋本じゅんさんはいつもの新感線の世界とは違ってどうかなぁと思っていたが、朴念仁が切れた演技がサイコーだった。中島さんも勿論上手かったが、役どころの「ウブな若妻」という雰囲気とちょっと違ったかな~。下手すると寺島さんの性悪女より苦労してそうな感じに見えてしまう。ちょっと残念。
ともあれ、80年近く前に書かれたとは思えないモダンなセンスのストーリーと、全員が芸達者という演技合戦に大満足だった。
ただ狭すぎるシアタークリエのロビーには不満。なんとかならんのかなぁアレは・・・

「バッタモン」は数多ある下北沢の劇場の中でも特に異彩を放つザ・スズナリで行われた田畑智子さんの一人芝居。ザ・スズナリは下北沢のアパートの2階(1階は小さな飲み屋が沢山)を改造した、全部で100人も入れば一杯になってしまう汚い劇場だが、いわゆる小劇団系の数々の名作(東京乾電池の作品とか)が上演されている小屋。
田畑さんは前からホントに芝居が上手いなぁと思っていたので、出かけていった。
一人芝居にも色々なパターンがあって、登場人物が独り言を言っているパターンや(老女優が思い出を一人回想する、井上ひさしの「化粧」なんかが有名ですね)、複数の人物を一人で演じるパターン、複数の人物がいるという設定なのだが、役者は一人だけを演じ、他の登場人物の動きやセリフは観ている側の想像に委ねられるパターンがある。
舞台が開けると、田畑さん演じる若い女性が、婚約者らしき男性と話したりじゃれ合ったりしている(勿論、男性は登場しない)。おお、第3のパターンだなと思ってみていたら、実はその男性は死んでいて、女性は孤独の余り、彼を妄想して独り言を言っているだけだったということが判ってくる。つまり、第3のパターンだと思ったら、本当は第1のパターンだったという、一人芝居の約束事を逆手にとって、観ている側をひっかける非常に凝った展開。そうか、これは全て田畑さん演じる女性の妄想なのだなと思っていると、すかさず元彼(これも実際には出てこない)が登場して、女性はそれと言い合うという、小説で言えば一人称と三人称が目まぐるしく入れ替わるような展開。
観ている方は、本当に元彼がそこにいるのか、元彼もまた彼女の妄想の産物なのかハッキリ判らず、非常に不安定な気分になってくる。これは巧いと思った。
ストーリーも最初は、結婚前の女性のささやかな物語と思わせておいて、いつのまにか国家的なテロの話になり、さらに最後には全てが夢かうつつか判らなく終わるという(あぁ読んでる方には、全然伝わってないだろうな。説明下手だなぁ)不思議な展開。
田畑さんは、泣き、不機嫌、笑い、切れる、したたかとありとあらゆる表情・芝居を説得力を持って演じていた。ホンマ巧いわこの人。
あまりに巧かったので、この様な凝ったプロットではなく、シンプルな一人芝居で、じっくり彼女の演技を観たかった気もした。

全く違ったタイプの芝居だが、どちらも大満足でした。
ちなみにどちらも、一人で観に行きました。これがホントの「一人芝居」・・・

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